ルックバックと「イタコの詩」

話題のルックバックを読んだので、なるべく早く感想を文字に起こす

 

 

 

ルックバックの感想は幾人かと交換したのだが、その際に有用な概念を2つ導入しよう。

 

 

1.イタコ系作品

 

本来直接扱うことが禁忌、タブーである事件を、作品中の事件を依り代にして降霊させることで、取り扱うことを可能としたもの。

最近でもないが、インパクトの大きい作品だと、輪るピングドラム地下鉄サリン事件が挙げられる。

ルックバックは公開された日付もあり、例の事件を否応もなく想起させるものだった。そのため、イタコ系作品に分類している。

 

2.詩

 

・よくわからなくてもポジティブな意味ですごさが伝わる

・作者のメッセージが直接表明されていない

・解釈が人によって異なりうる

 

のうちいくつかをそろえたものを詩と表現している。

こちらは詩というものへのわたしのイメージから再定義してある。

 

 

というわけで、ルックバックを「イタコの詩」と表現した。

わたしの目から見ると、例の事件について作者が詩を漫画の形で綴ったように見えたということである。

 

 

ルックバックは感想が千差万別であるのは特に興味深く思えた。これも作品が詩的な性質があるからなのではないかと思う。

 

例えば、感動的であるというポジティブな意見から、感動ポルノであるというネガティブな意見まで見えた。

 

が、わたしは、これは思いの丈をつづった詩に見えて、お涙ちょうだい的な感動を覚える作品には見えなかった。もしわたしが感動を覚えるとしたら、世の中に存在する理不尽な諸行無常が美しく綴られていることへの感動であった。

 

そもそもこの作品には作者の特別なメッセージ性は存在していないと思えた。むしろなにかの個人のメッセージがつづられていたら、陳腐化して評価されなかったのではないだろうか。

 

とりとめもない感想になりそうなので、わたしのルックバックへの感想まとめを書いて早めに終わろうと思う。

 

これ以上なく、儚く美しい詩を見せてくれてありがとうございました