ドラえもん映画をアマゾンプライムで配信されているものは一通り複数回みたので、感想記事。
配信されているものが対象なので、桃太郎なんなのさ、ドラえもんズ系は対象外。stand by me も対象外であり、理由は自分の好みの作風じゃないから見る気が起きないから。
具体的に対象を列挙するとちょうど40作品。下記である。
以下から本題にはいるが、まずは、評価する際の基準について述べてからランキングに入る。評価基準を見てからランキングを見る方が納得感は出ると予想しているが、評価基準だけでそこそこ長いので飛ばしてもよい。
評価基準
ドラえもんの映画を評価するということで、ある程度「ドラえもんらしさ」を持っているかどうかが評価基準になる。極端な例だと、いくら面白くても、ドラえもんの映画を見に行って劇場で「名探偵コナン ゼロの執行人」が上映されていたら、評価は低くなってしかるべきだろう。とはいえ、「地球外少年少女」が上映されているならそこまで評価が落ちないかもしれないと思うこともあり、「ドラえもんらしい」面白さを持っているかどうかを重要視することにした。
普通の作品でこの基準を持ち出すと、原作について0知識の人には全く関係ない評価になりがちなのだが、ドラえもんについては誰でも原作をしっているということで、ある程度許容される基準になるのではないだろうか。
さて、ドラえもんの面白さだが、藤子F期とそれ以降で大きく変わっているので、今回は、藤子F期とそれ以外でことなる評価基準を適用することにした。
以前にも記事に書いた内容が含まれるが、今回改めてまとめる
1.藤子F期
藤子先生のドラえもんの魅力は大きく3つと考えており、それらを満たしている作品をより上位に置くことにした。基準は以下である。
・見る人の科学への好奇心を刺激する
・ホラー要素がある
・さりげないSFの日常描写が心に響く
詳しくは個々の作品の感想で述べる
2.after 藤子F期
没後のドラえもんは、科学への好奇心の刺激、ホラー要素といった藤子先生の魅力の再現が全くできてないか、やろうとして大失敗しているものが多い。だが、だからといってすべてがつまらないというわけではなく、きちんといいところもある。
評価基準は以下である
・(リメイクの場合)旧作の不足している描写をきちんと埋めて、「余計な描写を追加しない」
・劇中で説明できない謎の設定を盛り込まない
・感動シーンが盛り込まれている場合、それが自然なものである
・見る人の科学への好奇心を刺激する
・冒険や探索でワクワク感を表現する
・アクションシーンを頑張って表現する
3.共通
・ゲストキャラクターが魅力的かどうか
これらの基準を採用した理由は、明らかな減点要素を入れていないことと、藤子先生の面白さが再現できないということをしっかり割り切って、「新しいドラえもんの面白さ」を創造できている場合に評価をしたいからである。
はっきりいって藤子先生の没後に藤子先生の面白さを簡単に再現できるなんてことはあり得ないことだ。没後の作品は迷走もかなり感じるが、個々の変遷をみると制作側もそれをわかっているかのような作品の変化をしていると読み取れたので、無理に旧ドラえもんの面白さを再現しようとせず、新しいドラえもんの面白さを表現できていれば、それを高く評価することにしてある。
以上が評価基準である。新ドラの評価基準から不穏な気配を感じた方がいたら、それは非常に正しい。とはいえ、見比べることで旧ドラの面白さの再発見にもなるので、旧ドラが大好きな人にこそ新ドラを見る価値があるとも思えている。ぜひランキングの21位未満も見てほしい。
ランキング
以上を元に評価したものが次である。順位に変動は気分でたびたびおこるが、赤、青、黒、の色分けに変更はあまり起きないはずである。
赤:上位。気分で順位が入れ替わることがあるので、個々の順位にそこまで意味はない。
青:中堅。こちらは気分でかなり順位の入れ替わりが激しいので、上位以上に順位に意味がない
黒:下位、ここは気分であまり順位に変動は起きない。
また、これらのランキングはその日の気分で変わるような面はたぶんにあるので、ブレがあるものだということは承知してみてもらいたい。
一位
感想
今回の基準だと新ドラから南極カチコチ大冒険が一位になった。正直一位にする際に、新ドラから一位というのはどうなんだろう?と思ってもしまったのだが、そういった固定観念で評価を下げるのが避けたいからこそ評価基準を設定したので、こちらを一位にすることにした。
新ドラは特に面白い作品が2つあり、その1つが南極カチコチである。
タイトルのまま南極を舞台にしたものであり、南極の古代文明を題材にしている
一般的に新ドラが評価の低いところとして、地球のミステリーのようなものを上手に扱っている作品が少ないところはたぶんにあると想像しているのだが、この作品は自然に扱うことができている。
南極カチコチの魅力は、この「自然さ」にある。新ドラが狙っている魅力をあますことなく自然に詰め込むことができている。奇をてらうことなく、自然に面白さが表現できているのが定番作品の映画だと大事だと改めて学べる作品である。
ホラー要素も多少は盛り込めているし、南極で普通に遊んでいる光景も旧ドラであっても違和感ない描写ができていて、新旧の魅力、つまり現在までのドラえもんの魅力が最も「自然に」表現できているのが、この南極カチコチである。
そこで一位をこの作品とした。今回の評価指標が無難に求められているものを表現している作品が高得点になりやすいものだったことはあるが、ドラえもんの魅力がわかりやすく表現された傑作である。新ドラがつまらないという色眼鏡を持つ人も多いようであるし、実際7割ぐらいはつまらないのであるが、新旧の面白さを融合というのは新にしか出来ない芸当なので、ぜひ見てもらいたい作品である。
二位
感想
こちらは旧ドラであり、旧ドラ一位となった。
しずかちゃんの扱いがあまりにも不遇なので現代ではリメイクがしづらそうなので、新ドラではおそらくリメイクされないのではないだろうか?
主な評価点は、
・しずかちゃんの扱いが不遇になるまでの流れが、藤子先生のホラー演出の巧みさを十分に感じるすばらしいものだった(私はしずかちゃんアンチではないです)
である。アラビアンナイトをモチーフにドラえもんを展開するとなると、完成度が極めて高いといえる。
ただ、無難にドラえもんの面白さを表現できているものの、無難である以上の一歩は踏み込めていないので、新旧の面白さを共に表現できている一位と比べると一歩劣ると捉えて二位とした。
三位
のび太の魔界大冒険
感想
この作品はドラえもんの魅力を十二分に表現していて、入門用として最も適しているともいえる。
魔法が使える世界にのび太がいくというものだが、特にすばらしいのは、魔法が使える世界の日常描写である。
のび太家は魔法のじゅうたんが高くて買えない、しずかちゃんに「科学なんて迷信信じてるの?」といわれる、といった秀逸な描写が散りばめられている。
また、魔界でも植物の描写などが詳しく、魔界というステージの日常が描写してあるのも大変興味をそそられながら鑑賞をしたものだ。
魔法が使えるという設定を採用した後に、その仮定のもとでの世界を細かく描写していることは、ドラえもんの映画のとる立場を明確にもしているといえる。初期作にこの魔界大冒険があるということは、ドラえもんがなぜ面白いのかを鑑賞者にも伝えているのだ。
ここまで絶賛するなら2位でいいのでは?とも思うかもしれないが、僅差で3位とした。2位のアラビアンナイトとドラえもんワールドとの接続がわたしは非常に高く評価しているのが理由なので、現実との接続にそこまで興味がない人は、魔界大冒険の方が評価が高くなるのではないだろうか。
旧ドラの魅力を余すことなく表現されているうえに、日常描写という面だと最も秀逸だといってよい傑作である。
四位
のび太のワンニャン時空伝
感想
旧声優陣の最後の作品。藤子先生没後なので、実質新ドラの範疇に捉えている。
藤子先生没後のドラえもん映画は阿鼻叫喚の様相を呈していたのだが、最後にこのワンニャン時空伝が上映されたことにより、終わりよければすべてよしといえないこともなくなった、ある意味で幾多の作品を救ったといえる貢献度の非常に大きい作品である。
実質新ドラということもあり、サイエンスホラー要素、ちょっと不思議要素といった旧ドラ成分は薄い作品である。ドラえもん映画の広義のペットでは、恐竜や犬のペコやフーコやキー坊やもふ助がいるが、それらと比べてペットそのものへ焦点が当たっている作品となっている。
ペット自体に焦点があたっているため、全編を通して犬猫の出番が際立っており、それだけで評価が上がる人も一定数いるだろう。ゲストキャラクターの魅力が高いこともこの順位につながっている。
新ドラはSF描写が描画できない以上、アクション・冒険と感動で評価するという前提であり、ワンニャン時空伝はどちらも高評価できる水準であり、わたしはドラえもん映画で全体で最も感動描写がうまいのがワンニャン時空伝であると思ったので、この順位においた。
ラストのビッグライトがいい加減マンネリといったところや、犬猫の進化の過程をもっと描写して欲しいといった希望はあるものの、新ドラはどのようにあるべきなのかを提起して旧ドラの最終作となっている。
せっかく提起してあるのに残念なことだが、ワンニャン時空伝の前後の映画の評価がかなり低いので、特異点としてワンニャン時空伝の評価が高くなってしまったところもある。気になる人は、ワンニャン時空伝の前後の作品のランキングを見直してみるといいだろう。同じミネラルウォーターでも家で飲むのと灼熱地獄で飲むのでは評価が違ってしまうのも仕方ない。
五位
感想
最初期の作品。この時点で、もうだめかというホラー要素、恐竜やその時代についての雑学、といった要素がきちんとあり、ドラえもんの基本文法が詰められている作品となっている。
四位のワンニャン時空伝と同じくのび太のペットものであり、ゲストキャラクターの魅力が高評価につながっているというのが共通項である。
ドラえもん映画はペットものは基本的に面白いのと、恐竜を題材というのも王道がきれいに融合されている。外しようがない要素で構成して本当に外れていないという作品だ。
また、一作目からタイムパトロールが強大な存在として描かれているのも特徴である。ここは人によって評価が分かれるポイントであるようには思える。
ドラえもんの映画ではタイムパトロールは圧倒的な「正義」であり、「強者」として描写される。いくらすごい道具があっても、ドラえもんはタイムパトロールに比べると小さい弱者なのである。
そこが人によっては違和感があってともすると消化不良になりかねない要素ではあるだろう。
ドラえもんはいくらすごい道具があっても小学生一行にすぎないという作品と、何でもできるヒーローとしてのび太達を扱う作品が同居しているので、ともすると一貫性がないようにも思えるかもしれない。
大まかには
現代の人たち(宇宙生物含む) < ドラえもん = 未来人 < タイムパトロール(未来の警察)
という力関係がベースになっているというのは前提とした方がすっきり見れるかもしれない。
六位
感想
新ドラオリジナルで面白いのは2本あり、南極カチコチとひみつ道具博物館である。
新ドラは旧ドラテイストのすこし不思議ができないという前提だと、すこし不思議の対極の、明るく敵方含めてひみつ道具で遊ぼうという作品になっている。
特に未来人が相手でも未来人がひみつ道具を用いることはなかったので、敵味方でひみつ道具の応酬をする場面などは、「こういうのを待っていた!」と唸るような面白さがあった。
ドラ泣き要素もあり、不自然に入っていたら容赦なく減点するつもりの要素であるが、自然に入っているうえに尺もちょうどよかったので、加点要素として大きく左右もしている。
この作品を見たときは以上の理由で、新ドラはこれで旧ドラを再現しようとして大失敗することもなく、きっと新ドラなりの面白さを追求していくのだろうと期待したものだが、全くそんなことはなかったのが残念なところである。
七位
のび太の新・日本誕生
感想
リメイクが本編より上となった唯一の作品である。
こちらではリメイクが本編より高かった理由のみ述べる
日本誕生のラストは、タイムパトロールが解決してしまい、それはそれでよかったがここまでやってきたのび太達がもっと関与してよかったのでは?と思う部分もあった。
リメイクでは最後の解決にのび太達がより関与するようになり、最後まで見たときのすっきり感は大きく増したと感じた。
旧ドラでタイムパトロールに丸投げして終わったものをこのようにリメイクするというのは、新ドラで行うリメイクの見本であるようにも感じられた。
とはいえ、同じような方針ののび太の恐竜は旧ドラの方が評価を高く置いたので、完成された一本の映画の要素を変更するというのが、困難であることも窺うことができる。
新・日本誕生はきちんと障害がクリアしたうえでなされたリメイクであり、もともとが面白いこともありこの順位をつけることになった。
八位
のび太の海底鬼岩城
感想
旧ドラを代表する名作であり、赤字なので気分で3位に置くこともある作品である。
深海、海底という謎に包まれた舞台で、夏休みを満喫するところから海底文明との接触、鬼岩城との対峙と至る。
個人的に好きなのはのび太が気絶しているときに見る海の生物の進化の夢で、こういった演出がドラえもんをドラえもんたらしめる重要なものであると思う。
また、ゲストキャラのバギーちゃんも、劇場版のゲストキャラクターとしてはトップレベルに一向になじんでいるし、物語への関与も非常に深い。
ドラえもん映画はペット枠以外のゲストキャラクターの関与は案外薄かったりする。祈鬼岩城はバギーちゃんの重要度が高いのに加えて、ひみつ道具であるためにドラえもん一行の出番を食っていないというのが、秀逸なバランスを感じさせる傑作につながっているといえるだろう。
鬼岩城は傑作なのだが自分が評価すると人より低いことがやや多く、理由は海底文明が唐突に出てきた割に発展しすぎていることへ、違和感を覚えることが多いからである。
細かいことなので自分が神経質な面もあるとは思うのだが、細かく描写している他の劇場版もあることから、今回は相対的に8位に落ち着くことになった。
九位
のび太と雲の王国
感想
ド定番の作品である。
特に今見ると、ラスト近辺での、強大な相手に対抗するために抑止力としてさらに強大な兵器を持つ必要があるというドラえもんの主張に唸るものをおぼえる。
環境保護をテーマにしている面が強調されがちな面があるが、個人的には抑止力としての兵器をドラえもんが肯定していることと、抑止力もタガが外れた人が実際に使ってしまう危険性を秘めていることを「ドラえもんで」描いていることが、特に秀逸であると思える。
先にラストから述べてしまったが、天国にあこがれたのび太が雲の上に自分の王国をつくり、それを発端に天上人とかかわっていくという作品である。
作品としては環境保護がメインテーマになりつつ、ドンジャラ村のホイくんやキー坊など、原作の過去エピソードの続きが描かれるのが大きな特徴といっていい。ドラえもんは原作の単話エピソードでもたびたび人気キャラクターが発生するので、そういったキャラクターが無事に過ごしていることを劇場版に盛り込んでいるのはとてもいいことだと思う。これは、ドラえもんは話数が多すぎて単発の作品を見ようと思うとどこになにがあるのかわかりづらくなるので、劇場で顛末があるというわかりやすい面を評価しているということでもある。
環境保護成分がかなり高いので、特定の立場の人の意見の発信場としてドラえもんが使われているのではないか?という疑問もやや生まれてしまうのが難点。特にドラえもんは森林伐採をとがめることが多いが、劇場版放映時点は木を大切にといって木造製品を控えようという提言が多かったかもしれないが、現代ではプラスチックを使うぐらいなら木を使う方がマシということになっているので、やや違和感も覚える。
これは環境保護を謳うドラえもん映画に共通することなのだが、環境にやさしいという概念がアップデートされることがおそらく想定できていなかったため、今見ると違和感が生まれる場面があるという脆弱性がある。
本来はリメイクで解決する要素なのだが、抑止力としての兵器の描写をきちんとリメイクでできるが大変不安にはなってしまう。
最後に雲の王国の一番のいいところを述べると、「短い」ことである。新ドラに比べて旧ドラはどれも短いのだが、雲の王国は他と比べても多くの要素が入っているのに、短いままなので、テンポよく話が進みあっという間に終わってしまうように思える作品である。テンポの良さなら、全ドラえもん映画でトップクラスといえるのではないだろうか。
十位
感想
これまた定番。原始時代にいって適当に遊んでたら、原始人を虐める悪者を見つけて、やっつけにいくというのがザックリあらすじ。
原始時代の描写も面白いが、つちだまの破片をドラえもんが調べているときの何とも言えない不気味さも印象深い。
また、のび太ペット回という基本的に外れがない回でもある。
そんなわけで定番作品なのだが、今回は青字枠でとどまった。理由は、
・原始時代の描写の時間が長すぎるし、後半いろいろ詰め込みすぎてタイムパトロールに尺を投げた感が強い
・たまたまドラえもんたちがいった時代に原始人と悪者がいたというのになんの説明もないのが、ご都合感が強い
・敵サイドがすごそうで凄みを発揮しないで終わる
といった感想も残るからである。そんな細かいことで減点しなくてもいいのでは?というのも一理あるとは思うのだが、これらをある程度解決したリメイクで新・日本誕生があるので、青字枠にした。もし新・日本誕生がなかったら文句なしの赤字枠であり、安心して人に勧められる名作である。
十一位
のび太とアニマル惑星
感想
藤子先生のホラー成分が非常に高い作品。人によってはかなり刺さってもっと上の位置に来るかもしれない。
あらすじは、動物たちの惑星にのび太がなぜか迷い込み、惑星へ侵略しにくるものから現地の動物を救うという話。
特に面白いところは先に述べたホラー要素で、迷い込む演出、また戻ってきたときに動物たちの進化の謎についてドラえもんが考察するシーン、などなどから感じる藤子先生のいかにも得意そうなホラー要素がかなり好みであった。
とはいえ、内容はタイムパトロール丸投げ系なのと、人間=悪、動物=善の表現が安直すぎて浅くさえ感じられるようなものであったため、順位はそこまで伸びなかった。
刺さる人には赤字にも負けない作品であるとは思うが、わたしがホラー要素を評価してこの順位なので、人によってはもっと順位が低くなってもおかしくないという位置づけだと認識している。
十二位
のび太の恐竜 2006
感想
元がのび太の恐竜という名作だからある程度の面白さは担保されている。
また、タイムパトロール丸投げエンドだった原作のリメイクという、リメイクとしてあるべきものとなっている。
それはいいのだが、全体的にちょっとずつ原作より物足りない感じが蓄積して、なんともいえない不思議な気持ちで見終わった作品だった。
全体像は原作よりいいかもしれないけど、細部まで見ていくと原作の方が好みと思えてこの順位にした。
もちろん面白い作品ではあるので、タイムパトロール丸投げ系作品があまり好きでない人は、こちらの方が順位が高くもなりうるだろう。
十三位
感想
ドラえもん映画2作目で、ややこぢんまりした雰囲気を覚える人もいるかもしれないというぐらい、地味な作品。また、たびたびあるドラえもんの「異世界転生枠」の元祖でもある。
この作品はドラえもん風に異世界転生をやってみましたというのが恐らく最も明快で、大昔に現代の異世界転生作品の魁のような映画があるというのは、藤子先生の感性が先鋭化されていることを感じさせるものではないだろうか。異世界の描き方もまた秀逸である。
地味だが内容が首尾一貫していてテンポよく気持ちよくみられる名作である。もっと評価が高くても不思議ではない作品だとは思うのだが、地味な印象に引っ張られてこの順位に落ち着かせてしまった。
十四位
のび太とブリキの迷宮
感想
ロボットに支配された星の人が地球にSOSを求めて、ブリキの迷宮の奥に隠されたものを使って逆襲をしようというのが簡単なあらすじ。ブリキの迷宮の奥深くに到達するのが目標というのも、これまでに比べて斬新で面白いところがある。
まとまった面白い作品なのだが、他と比べて「ブリキの迷宮だからこその面白さ」というのがあまりなく、進行に対して無駄な尺が多いような印象もある。伸ばした尺を利用して山あり谷ありをうまく表現はできているのだが、ブリキの迷宮のインパクトに比べてそのほかの内容が弱いという、「出オチ」感は覚えてしまって。この順位に留まった。
だが、わたしが幼児のころドラえもん映画を一気見したとき、ブリキの迷宮はやけに気に入って一番周回していたということがあるので、情報量の負担が少なく受け手が処理しやすいのに、十分楽しめるという驚異的な作品ということも可能かもしれない。
あっさり見れる面白いドラえもんということだと一押しである。
十五位
感想
ライブドアがプロ野球参入の際に球団名を募集したとき、「ホリえもん ふる太と鉄人兵団」が投票されたことで有名な、のび太と鉄人兵団である。残念ながら野球要素はない。
名前の通りロボットものであり、百式をコンボイカラーで塗り上げたロボットを、鹵獲して敵ロボット軍団と戦う。
この作品の魅力は、
・少人数でロボット軍団相手に持ちこたえるのび太達の奮闘、特にメインメンバー全員がきちんと戦う作品は意外と少ないのが評価できる
・ゲストキャラのリルルとの交流から、最後の締めまで
になるだろう。
他の作品でも当てはまることだが、ドラえもんは戦争になったからといって、敵軍団を武力を以って全滅させるようなことは基本的にしないし、おそらくそもそも作風の維持のために出来ない。敵勢力の根こそぎの排除を行ってしまうのは、ドラえもんの作風から離れてしまうのである。
そのため、ボスを一気に倒して大団円か、仲直りして終わりか、タイムパトロールなどに丸投げか、といった終わりになりやすい。
だが、鉄人兵団は敵ロボットがほぼ悪意に満ちており、ボスだけ倒して終わりも、仲直りもあり得ないし、時空犯罪でもないのでタイムパトロールに投げることもできない。
鉄人兵団は初期の作風にして、この、「ドラえもんは武力を以っての根こそぎ掃討を行えない」という縛りと、「それなのに相手は全員戦闘意欲MAX」に対して。見事な回答を示していることが一番の魅力に感じられている。
十分面白いがこの順位にとどめたのは、このタイトルと内容ならもっとロボットの活躍するシーンが見たかったという思いも生じたからである。
ロボットを持ち出すとどうしても兵器の印象が強くなりドラえもんの印象から離れる難しさはあるとは思うが、せっかくのロボットもの作品なのだからやや消化不良を覚えたのでこの順位にとどめた。
十六位
のび太の宇宙小戦争
感想
武田鉄矢の「少年期」が有名な映画。少年期をもっと評価して順位を上げてもいいのではないか?という意見もあり得ると思う。
宇宙開拓使に近い、異世界転生枠のような、そうでないようなという作品。最終的には異世界転生枠だったということにしてもよいかもしれない。
これもきれいに纏まっている面白い作品なのだが、特段優れている要素がなかなか思いつかず難しいというもの。
鉄人兵団で述べた内容にも通じるが、ドラえもんは好戦的な内容になってはいけないため、戦争への介入動機も終戦方法も工夫が必要となる。
宇宙小戦争は動機付けとして、しずかちゃんを身を挺してゲストキャラが助けたという内容が使われるのだが、そもそもゲストキャラがいなければ危険な目にもあわない場面だった。加えて、尺の配分が動機付けまでが長く肝心の宇宙小戦争の分を奪っているような印象もあったので、この順位にとどめた。
色々書いたが、動機づけの部分まででやや減点はしたものの、それ以外は特に減点はしていない名作である。特に、個性ある犬をぶちこんできた藤子先生のセンスの抜群さも感じることができ、動機づけまでで酌を長く使ったからこそ、後半のスピーディーな展開を楽しめるともいえる。そのため、これも人によってはもっと評価が高くなっても全く不思議ではない作品である。
十七位
感想
のび太達が未来のVRを更に進化させた西遊記のゲームで遊んでいたら、ゲームから妖怪が脱走して、妖怪が支配する世界になったので、妖怪を倒して元の世界に戻そうという話。
ドラえもん映画の曲といえば少年期がやはり有名だが、本作の主題歌の「君がいるから」はドラえもん映画の曲で個人的には一番好きな曲であり、主題歌補正でもっと順位上げるかも迷った作品であった。
あらすじでわかる通り正直自作自演感がある作品であるのと、後半の盛り上がりもいまいちに思えたので、この順位にとどめてある。盛り上がりが微妙だと感じたのは、ゲストキャラの使い方がいまいちだと思えたことが大きいので、リメイクされることがあればゲストキャラの利用を変えてほしいが、悪い方に転びやすい要素でもあるので、不安もある作品である。ゲームでもらえた強い道具が、筋斗雲と如意棒でのび太ばかり目立ちやすい設計なのも理由であるが、これは西遊記という題材なら仕方ないことなのかもしれない。
いいところは、三蔵法師という実在の人物が登場することで、現実との接続を意識しやすくワクワクしやすいところと、妖怪が支配した世界の不気味さが素晴らしかったことにある。
自作自演感が気にならずに、主題歌が気に入った人なら、赤字枠に入ってきても妥当となるような名作であるし、舞台の想像がしやすいことから疲れずに見れる作品でもあるので、十分お勧めできる名作である。
十八位
のび太と竜の騎士
感想
ウルトラ地味な作品。幼児のころから通算で10回以上見てるのに全く記憶に残らない。だが、見てみると毎回面白いと思えるという不思議な魅力のある作品である。
地底世界と恐竜人をテーマにしているだけでなく、その後の創生日記や新恐竜に比べると無理のなくテンポのよい話の構成ができているのも感じられる、
地球空洞説と地底人という題材も、本当にこういうのがあるかもしれないと子供の好奇心をくすぐる、藤子先生の得意なものであるといっていいのではないだろうか。
ここまで書くといいところだけのようだが、なぜか本当に地味で印象が薄い。話の起伏はきちんとあるものの、それぞれの起伏が少ない上に、地底世界と地底人がいましたというだけだと、テレビサイズで交流して終わりでも十分なことが理由にあるのかもしれない。
地味で印象が薄くて記憶に残っていないというともすれば理不尽な理由で順位を下げてこの順位になった。
これもドラえもんの映画は印象深い作品が多いからこそ起きたことだといえよう
十九位
のび太の大魔境
感想
ゲストキャラクターが、おなかペコペコで行き倒れかけていた王族で、つけられたあだ名がペコという、サイゲームズのゲームに出てきそうなキャラ。
のび太ペット回という、外れの少ない回でもある。
実際順位は低いものの、つまらないというわけでは決してなく、他も面白いから泣く泣くこの順位になったという理由が大きい。
特に秀逸なのは、スモーカーフォレストの設定であり、これはドラえもんがいかに真面目に視聴者に向かい合っていたのかを指す代表的なものである。
導入は、のび太が秘境を探したいというが、「現代で探索されてないところはない」(他の作品感想のフラグです)となった。しかし、アフリカに一年中煙で上空が覆われているスモーカーフォレストという地域があり、そこに秘境があるというものである。
そこから秘境探検につながり、そこで現地を探検し、軍事政権によるクーデターへの反抗に協力するというのが大まかなあらすじである。
スモーカーフォレスト、アフリカ探検の道中が面白い、最後の像の中も結構盛り上がってるといったプラス要素はあるものの、ラストの救援者がドラえもんじゃないとできない流れだとはいえ、面白いかというとう~んという感じ。また、道中で無駄にアフリカの獣を虐めているような感想も持ってしまったので、面白い作品群の中では下位の位置づけとした。いわば、心霊スポットに行ってごみを現地に捨てていくヤンキーの姿を見ているのに近い感想も持ってしまったのである。
二十位
のび太と夢幻三剣士
感想
夢の中で遊べるゲーム機をドラえもんが用意して、その中で魔王を倒すまでを描くもの。パラレル西遊記に続いてゲームものだが、こちらはソードアートオンラインのように、中で死んだら本当に死ぬデスゲームになぜかのび太達自らしてしまう。とはいえそのおかげで緊張感が増すので、ゲームを遊ぶだけでも大長編ドラえもん足りえた面がある。
本作はドラえもん映画の中でも「考察」をもっともし甲斐がある作品であるとも言える。
ゲーム内の存在の敵が現実にたびたび出没しているようにしか見えないが、その謎が回収されなかったり、ラストシーンが今が現実なのか夢なのかよくわからないもので終わったりとである。
わたしは、現実に影響を与えるパワーを持つゲーム(曖昧で藤子先生らしくない気もするのだが)なので影響を与えた結果のラストシーンだろうぐらいに作品内の論理だと妥当だろうとは思っていて、メタ目線だと伏線が回収できなくてよくわからないことになったんだろうと思っている。
伏線回収以外にも全体的に気になるところは多々ある。
・夢幻三剣士というタイトルなのに三剣士が活躍するわけではない
・途中でデスゲーム化させるのが、ドラえもんが道具ばかり使ってゲームを真面目にプレイしてないからなのだが、デスゲーム化させることでのび太がゲーム内を現実と認識しているので、逆に道具を使うことへの抵抗がなくなってしまい、そのあとはひみつ道具使い放題になる
・白金の剣が名刀電光丸ていどの活躍しかしていない
・主題歌の歌詞が子供のころは共感できるいい歌だと思っていたのが、今見るとかなりの詭弁に見えて印象より評価が落ちた
といったのが主に気になるものである。
ただ、いいところも多分にあり、
・のび太が現実を参考に役立たないと思われてゲームに誘われたのに、生来のやさしさで物事を解決する場面があり、能力はおいておいて気持ちがやさしい(要審議)から解決できるものがあるという描写が上手い
・最後のとどめをさすひみつ道具は他の映画でも同様に使われる定番だが、演出が特によい
・ふつうは伏線が回収しきれないとgdgdな面が目立つが、藤子先生はそれを「不気味さ」「ホラーさ」に昇華させている。不完全さを魅力へと昇華する作品作りのうまさには唸るほかしかない
気になる点は多いものの、ホラー要素もドラえもんを構成する大事な要素であるので、総合的には青字枠だと判断し、この位置に置いた。
二十一位
新・のび太の大魔境
感想
リメイク前と同点でもよいぐらいで、変わっていないと感想の人も多いのではないかというリメイク。
評価の差だが、上映時間を比べると、新の方が17分長くなっている。
内容がほぼ同じだったら短い方がテンポよく濃度が高くなっているということで、差が生まれたと捉えるので問題はない。
二十二位
のび太のねじ巻き都市冒険記
感想
藤子先生の遺作となった作品。そして、これが遺作であるという前提で見るかどうかで、なかなか見方も変わってくる作品。
ねじまき都市はかなり火の鳥らしさを感じる作品で、火の鳥の「クローン人間狩り」のエピソードとかなり近いものがある。
また、今作では珍しく超自然的な存在、神のような存在が現れる。のび太達が神のような役割をこなすことはあるのだが、本当の神が出てくるのは驚きだった。
火の鳥も神のようなものだといえなくもないので、晩年になって火の鳥のような世界観の作品が急にやってきたのは、死の間際になると価値観の変容が訪れるのだろうか?という疑問さえ生まれながら見ていた作品である。
本作は面白いといっていい作品なのだが、最大の特徴は、倫理観の薄さである。生命倫理をここまで軽く扱っている作品は、ドラえもんでは珍しい。
子供が見るとなんとも思わないのかもしれないが、大人になってから見ると、唖然とするような描写が多々ある。
面白いかどうかの話でいうと、神の存在は正直面白いと思えないものだったが、生命倫理の扱いは面白さというよりは受け入れやすさの問題なので、受け入れられるかどうかで多少評価がぶれるかもしれないというところだろう。
以上の理由で青の中でも下の方に配置したが、「すごい」作品ではあり、いわゆる「上級者向けアニメ」のような位置づけで存在するものだと捉えるとよいだろう。
二十三位
のび太の銀河超特急
感想
ありそうでなかった銀河特急もの。一番の特徴がしずかちゃんのお風呂シーンが、尺の長さ×画質で評価するとぶっちぎりでドラえもん映画の中でぶっちぎり高得点となることだ。さらに、お風呂シーンで重大なことが起こるので、リメイクでも省略することができない。リメイクどうするんだろう。
名前の通り、のび太達が銀河超特急に乗ったら、宇宙人に襲われて撃退する話である。
嫌いではないのだが、のび太の活躍に対してメタ的なセリフがあったりと、どこかちぐはぐな印象も受ける作品である。
評価があまり高くない理由としては、銀河超特急でいろいろ遊んでいても、遊んでいる内容がわざわざ宇宙で遊ぶ内容に思えず、なんでこれ銀河超特急乗っているんだっけ?という気持ちが強かったからである。
もっといろんな星にたどり着く方が面白かったと思うが、尺の問題で不可能だったため、苦肉の策で映画で訪れたような星に訪れたのだろうが、一つ一つの内容がかなり薄く裏目に出たようにしか思えなかった。
そのため中盤のあたりの評価があまり高くない。いいところは、今回はしずかちゃんの出番がお風呂ぐらいで他の作品と比べて短い代わりに、スネ夫やジャイアンの出番が目立つ感じできちんとあるところである。
のび太の活躍も多いが、多すぎるので違和感を覚える人もいるかもしれない。個人的には映画はもっとのび太の射撃の腕を強調すべきだと思っていたので、これぐらいあってもいいと思う。
ただ、ねじまき都市と銀河超特急の2年連続でのび太の射撃の腕が強調されているのは、構成としてよくない面はあるかもしれないが、今回はそこはどちらの作品も減点材料としては扱っていない。
二十四位
のび太の創生日記
感想
青字枠の最後。そして、生命倫理感がやばいドラえもんその2(時系列的にはこれが1)
夏休みの宿題で、銀河を創造して、そこの地球で文明の発展を見守るという話。
しかし、作った地球に本物の生命がいるというのはなかなかにダイナミックで、未来デパートの自由研究コーナー恐ろしすぎると思えたものだ。
中の人が自発的に外に出ることも可能なようだし(正直ここの描写が適当に思えた)、なにより内部の時間の流れと外の時間の流れが違うので、あっという間に外部の時間を内部の時間が追い越して、とんでもないことになるのではないかと危惧を持たざるを得ない、やばいひみつ道具である。
生命倫理的にも内容的にもトップクラスにやばいひみつ道具だが、そういった問題点に目をつむって評していこう。
面白いのは銀河誕生から20世紀初頭程度までの時間の流れを、のび太達と一緒に観察できることである。平安時代までの観察から急に19世紀初頭に飛んだが、そこを扱うと歴史がテーマになって面白くなくなるという判断だろうか。
銀河誕生と地球の生命誕生あたりは特に面白くみることができたが、途中からのび太の血筋の人の生活を追うことになって。地球を追うのか一つの血筋を追うのかがごちゃごちゃになってよくわからないことになり、スケールダウンしているかのように思えたのが減点要因となった。
また、自分が悪いのかもしれないが、これらの自作自演系の作品はこぢんまり感を覚えてしまう。ここは、人によっての好みが出るところだとは思うので、全く気にならない人はもっと評価が高くなるだろう。
二十五位
のび太の南海大冒険
感想
ここから黒字枠。黒字枠の一本目は、藤子先生没後の映画1本目。
黒字枠の一本目としてこれほどふさわしいものはないだろう。なお、藤子先生の生前の作品はすべて紹介しており、これ以降はすべて没後の作品である。
黒字枠に共通するのだが、物語の導入や、展開の変化がいい加減なことがしばしばみられる。
今回は導入はまだいいのだが、途中の場面転換がそれでいいのか?という謎の場面転換だし、ネタ晴らしされてもご都合感を強く覚えた。
ゲストの動物もただ便利なキャラとしてしか描写されてなかったが、せっかくなのでのび太との絡みをもっと工夫できなかったものかと思う。
いいところは、短いことで、やや強引に話を進めているところはあるものの、間延びする寸前のギリギリで押し留まっていたところである。
新ドラ映画は長くなることが多く見ていて疲れることも多いので、中身が同じだったら短い方が映画は中身が詰まっていて面白いということを、ドラえもん映画を周回しながらよく実感できた。
二十六位
のび太の宇宙漂流記
感想
宇宙体験ゲームで遊んでいたら、間違えて本物の宇宙船にジャイアンとスネ夫がゲームごと回収され、助けに行った後に地球に戻るまでにかなりすったもんだがあるという作品。
まだ旧声優陣だが、ここら辺から徐々にドラえもん映画を見ながら?と思う要素が目立ち始める。
ラスボスをドラえもんがためらいもなく事実上殺傷のようなことをして、その後に、「正体はみんなの心に潜む悪意だったんだよ」といっているのだが、生命体を殺傷した後に、「みんなの心の悪意が正体なんだよ」と平然というドラえもんを見て、ドラえもん壊れたのか??と本気で疑ってしまった。
そういう違和感があるが、他は基本的につまらないもののたまに面白いシーンがあるので、黒の中では上の方になった。
特にいろんな星の謎の生き物が出てくるところは、魔界大冒険の魔界の生物の生態を描いていたころを思い出し、もっと面白い表現はできるだろうがこの方針は好ましいと思えた。
特別面白くはないし、ラストで???となって終わるものの、個人的なボーダーをギリギリ上回っていたので、黒の中では上の方においた。
魔界大冒険の魔界の生物の描写に興味をそそられなかった人の場合は、とんでもなく低い評価をつける恐れもあり、ポテンシャルを秘めた逸材である。
二十七位
のび太の月面探査記
感想
こちらはもっと高くても全然よい作品で、人によっては青字枠で全然不思議はない作品である。
個人的に評価がかなり低い理由は、この物語の発端となる異説バッジが、この規模で利用するとややこしいことにある。あらすじを一言で書くのも無理になってしまっている。
111分と長い映画なのだが、長くなっている上に、ややわかりにくいひみつ道具とややわかりにくい背景関係となっているので、言ってしまえば情報過多で映画時間が間延びして、テンポを損なっている印象を強く受けてしまっている。
とはいえ、比較的長いことが全く気にならない場合や、説明が普段のドラえもんより色々多いことが許容できるなら、もっと評価が高くなるだろう。
ドラえもん映画としてみたら評価が低くなったという典型例なので、自分もこれがキテレツ大百科の劇場版だったら青字枠相当には評価しただろう。
二十八位
感想
のび太達がヒーローもののテレビ番組にあこがれて、ドラえもんと一緒にヒーローものの撮影を始めたら、本物だと思った宇宙人にSOSを発信され、これも映画の一環だと勘違いした一行が本当に助けに行くという話である。
所々で、のび太達は偽のヒーローであるという後ろめたさが強調され、そんな中でも星を救い本物のヒーローになっていくという物語である。
だが、そもそもコンセプトが破綻しているようにしか最初から思えなかったので、見ていてどうにもちぐはぐな感想をずっと持っていた。
ヒーローの力を得ることができるヒーロースーツを装着して、ドラえもんというプラスアルファ以上の存在がいるのであれば、実力的にはヒーローと変わらないどころか上回っていてもおかしくないので、「僕たちは映画の撮影していただけ」って言われても、「もっと弱いで戦ってた他の映画はどうなんだよ」のようなきもちにしかならなかった。
他には目立って面白い要素がなかったというのがこの順位になった理由である。
この25位から28位の作品は、
目立って面白いところがない+なにか大きく気になるポイントがある
というのが固まっている
二十九位
のび太の新恐竜
感想
人によってはこれより低い評価にもなるようで、案外評判が悪い映画
のび太の恐竜のリメイクというわけでもなく、ベースになってるかさえ怪しい。ほぼ新しい映画である。
のび太の恐竜と比べて、恐竜が2体になっていて、終盤の展開はほぼ別物となっている。
個人的にはのび太とタイムパトロールのやり取り周辺が、なんかドラえもんサイドやばいな??と違和感を持ったが、最も大きな違和感は、「恐竜の頭が良すぎる」ことである。このような都合のいい雑なつくりは新ドラではかなり目立ってしまっていて、藤子先生生前と比べて、子供に本気で向かい合ってないのような評に繋がりやすいのだろう。ある程度頭がいいのは話の都合で許容できるのだが、新恐竜たちはもはや人間と同等の知能を持っているようにしか見えなかったので、自分には不気味な存在に思えて、展開にも感情移入しづらかった。
また、新恐竜は所々で恐竜を見ている人へのミスリードのようなものを狙っているところがある。だが、ミスリードしたところで面白い展開になっていないのに、これも110分という長い映画なのが、かなり気になってしまう。ミスリードを入れてテンポを悪くするというのは勘弁願いたかったものだ。
新恐竜はじぶんはかなり評価が低いが、以上のように結論ありきで仮定の練りがかなり足りないと思えていることが理由となっている。
子供向け映画だからそんなもんじゃないか?といわれたらそうかもしれないが、旧ドラが藤子先生が子供に真摯に向かい合い、大人でも十分楽しめ発見がある映画を作っていたことを考えると、「子供向け映画だからそんなもん」という感想が生じること自体が、ドラえもんのこれまでの蓄積を無にしているといってもよいのではないかとさえ思えてしまうのが本心である。
とはいえ、ここまでは黒字の中では全然面白い方なので、興味があるなら通常の意味でぜひ見てほしい映画といえる。
WARNING ! !
これより下の映画は刺激が強いです。映画を見る際は自己責任でお願いします。また、内容に伴い感想も強い表現が多くなりますが、ご承知の上でご覧ください。
三十位
のび太の新魔界大冒険
感想
魔界大冒険の面白いところを削り、不要なドラ泣き要素をぶっこんで、上映時間が15分のびるテンポの悪さも備えた、なかなかのリメイク作品。
元が魔界大冒険なのでもっと上でもよいような面はあるのだが、追加要素があまりに浅かったので、warning帯送りとしてしまった。
新魔界大冒険のみ見るなら、もっと点数は高くて青字でも不思議ではない。
しかし、冒頭にも書いた通りドラえもんだと期待して見に行くものなので、リメイクとしてよくできていないということで減点するのは妥当だと考え、この順位にすることになった。
ドラえもんの本来の面白さをそぎ落として浅いドラ泣きをねじ込むという、新ドラの悪いところがすぐ確認できるという意味では、視聴の価値は高い
三十一位
新・のび太と鉄人兵団
感想
三十一位からは、見ながら思わず「つまんねー!」と叫んだ作品が連なる。新鉄人兵団もノーガードで見たら叫ぶ羽目になって、大変驚いた。
主な違いは、旧では改造した敵ロボットを、のび太達との交流で改心させて味方サイドに引き込んだことである。改造が洗脳に近いようなものだと思い、ドラえもんに似つかわしくないという判断なのかもしれない。ただ、ドラえもんはもともと口が悪いキャラであるし、改造をちゅうちょなくやるぐらいの方がキャラ解釈では正常だと思うので、改心の方針自体が正しいかはコメントができないところだ。
それより、改造のような行動が放送的にまずいというような判断だったとしたら、表現の幅がずいぶん狭くなると心配を覚えたものだ。
改心路線に長い尺を使う上に、敵ロボットがなぜか萌えキャラ化して、ポカーンとしているうちに交流して絆が深まっていく。
さて、元々の鉄人兵団の話に戻ると、ドラえもん達は敵戦力を武力で掃討できないという縛りがあり、鉄人兵団は敵全員が好戦的なので、解決が難しい。そこを見事に解決する場面、関わるリルルの美しさが面白さを彩る作品である。
だが、敵ロボットが会心の余地があるという前提を加えてしまうと、話が一気に変わってくる。ドラえもん達が鉄人兵団のラストに至る、敵ロボットたちが全員好戦的という仮定が抜け落ちるので、宥和路線がより現実的な解決策になってしまうのだ。
それなのにラストが変わっていないので、ドラえもん達は縛りがあり、今回の解決は極めて困難なところを解決したという、鉄人兵団の美しさが損なわれているのが一番の問題である。
それと萌えキャラとの浅い交流が相まって、表面だけ取り繕った浅いリメイクという印象がぬぐえず、この順位をつけるに至った。
三十二位
感想
これはwarning帯においたが、一押し映画である。
こんなにいいクソ映画入門はない。
完成された映画から、大事なシーンだけ削除して、不条理ギャグ映画を作成したら人魚大海戦になったというべきなような、笑えるクソ映画である。
問題点を羅列すると、
・冒頭のサメからサメ映画だから不条理なのでは?と予想する人もいる。正しい
・最初の道具の説明を聞くと後がわからなくなるから聞かない方がいい
・スネ夫と餃子のやりとりでの周りの行動が狂気に満ちている。ここら辺から本格的にねじが外れてくる
・海底へ向かうシーンで、少年期以来の武田鉄矢の歌が挿入されるが、なぜこんな明るいシーンでこんな物悲しいエンディングテーマを入れるんだ?となる。たとえるなら、遊園地で遊ぶシーンのBGMが蛍の光のようなものである
・人魚の女王がなぜか戦争の直前に孫に全責任を押し付けて退任して、そのシーンでドラえもん一行が感動して涙ぐむ
・人魚の剣を開放したらなぜか不思議な場所にPOPする
・水を操る人魚の剣で宇宙征服をしようとする悪役が本当に理解できない
・人魚の鎧って何だったんだ?
・ドラえもん映画で現状唯一、ゲストキャラとのお別れをせずに終わる。それに気づくと、その他のドラえもん映画を見るときに、「これはお別れシーンがあるかどうか」チェックすることになるという、呪いを受けることになる
となる。
あらすじは書いてないが、もうそんな次元じゃないので必要ないだろう。
三十三位
三十四位
三十五位
三十六位
のび太と翼の勇者たち
のび太とロボット王国
のび太とふしぎ風使い
感想 × 4
急に4本セットになったが、これらは4本まとめてこそ価値がある作品なので、ひとまとめにした。
その理由だが、単純に4年連続でこれらが上映されたというだけでなく、話の骨子がだいたい同じなのである。
しかもどれも絶妙に面白いといえないラインだが、ギリギリ耐えられるという出来で、連続した作品で評価したときに一番の暗黒期はこの時期であると断言できる。一つ一つなら25位程度なのだが、コンボボーナスでまとめてこの帯域に放り込むことにした。
ふしぎ風使いを最後に映画自体打ち切りになってもおかしくないレベルだったと思っているので、ワンニャン時空伝で有終の美を飾れたのも、旧ドラは終わっても次に新ドラに移行できたのも、改めて思うとよかったとしか言いようがない。
共通する悪いところが複数あるので、作品を指定せず気になるところを述べる
・偶然に異世界と通じるパターンを連続しないでほしい。宇宙開拓使の、畳の下が宇宙船につながったという設定が、いかにワクワクを持てる異世界とのドアーだったかがよくわかる
・呪術とか霊魂とかオカルトな要素が当たり前に存在して説明抜きなの勘弁してほしい。魔界大冒険で魔法が使える世界に行くのにもしもボックス使ったのは何だったんだ
・翼の勇者たちとふしぎ風使いは、名前から感じる雰囲気からしてかぶりすぎていると誰か指摘しなかったのか本当に聞きたい
また、コンボボーナス抜きで評価するなら、翼の勇者たちがもっともひどいので、1本だけ見るならこれがおすすめである。翼の勇者たちからは、作りも展開も雑だし、道具を肯定するのか否定するのかもよくわからないし、といったいい加減さを強く感じたのだが、もはやいい加減すぎて笑えるので、クソ映画入門教材としてちょうどいいだろう。
逆に一番面白いのはふしぎ風使いで、のび太ペット回という安定要素もあるので、普通の意味で一個おすすめするならこれである。ふしぎ風使いは他の3つと比べるとペット回というだけでだいぶましなのだが、あまりにも雑に地球の秘境に接続したりと雑に感じる面がある割にペット要素以外に面白いと思える点もなかったので、異世界4天王とくくってランキングをつけてしまった。
三十七位
感想
人によっては一番つまらないと評価されることもある作品。
ただ、奇跡の島のつまらなさは、これまでのドラえもんの否定というところも大きいので、ドラえもん自体への思い入れでもだいぶ評価が変わるだろう。
例えば、「のび太はペットの面倒をまともに見ないダメな子」といわれているが、これまでの映画でペットをちゃんとかわいがるのび太を見ているこちらからすると、今までの映画ののび太を全否定しているような作品に困惑する。
なお、この映画では実際のび太はカブトムシの扱いがあまりにもひどいので、キャラ崩壊をしているといっても過言ではない
他にも、スモーカーフォレストにより秘境が隠匿されていた大魔境と比べると、奇跡の島の「宇宙パワーで隠されていた」という説明は、もはやどこからだめだしすればいいのか分からないほどの酷さである。
他には後半の敵戦闘員や敵メカとの戦いが、つまらないとかキャラ崩壊とかを超えて、理解できないなにかを見せられているような場面であることや、全く面倒見てもらっていないカブトムシがのび太のために戦うことに、一切説得力がなくてカブトムシがかわいそうにしか思えないといった問題点がある。
とはいえ、キャラ崩壊を除けば下位層の中ではそこまで目立ったものではない。
例えば、ゴールデンヘラクレスが解放されたとき、これが人魚大海戦なら悪役の目の前に解放されていたはずで、その他のめちゃくちゃ作品と比べて本当にひどいかというとそうでもないと判断している。
最も、笑えるクソ映画であった人魚大海戦と比べて、トンチキ展開がないのはマイナスになっており、「つまらない上に見る価値さえない映画」である。
キャラ崩壊をしている上に、よくわからないものを見せられて、かといって笑えるほどのクソさかというと怪しい映画であるので、需要が最もないところを的確についている、ある意味すごい作品である。
三十八位
解説
ノーガードで見たら大ダメージを受けた衝撃的な作品。
宇宙開拓使に比べて、
・声優が映画でありがちなダメなチョイス
・謎の新キャラの謎の追加ストーリーの追加
という点が主な違いなのだが、終盤のつまらなさの最大瞬間風速があまりにも高くて、吹き飛ばされてしまい、この順位をつけることにした。
コナン映画四天王で例えると、11人目のストライカーと同じ種類の作品である。
ちなみにコナン映画四天王は
11人目のストライカー:つまらなさの瞬間最大風速
紺碧の棺:虚無
豪華の向日葵:意味不明
銀翼の魔術師:不快
を特徴とするものを指す。
それにしてもよくここまでリメイクで改悪できるものだと感心さえした。このリメイクに至るロジックが何も思いつかないという点でも、こちらの理解を超えているなかなかにパワフルな映画である。
三十九位
解説
コナン映画でいうと、
豪華の向日葵+紺碧の棺
もちろん足しただけでそのあと2で割ったりはしない。
感想なのだが、この映画についてはほとんど書くことがない。なぜなら、何度見ても頭に入らないから何度も見直そうとするのだが、何度見ても頭に入らないのである。
中盤から後半にかけての記憶がすっかり抜けてしまい、全然頭に残らない。いや、そもそも何も起こっていないから頭に入りようがないのかもしれないが、これは豪華の向日葵と同様の現象であり、同種の作品であると判断をしている。
途中までのび太の南海大冒険とほとんど同じなので、この前までのび太の南海大冒険のリメイクだと思い込んでいたら、違うらしいし、全体的に自分が理解できる外の映画である。
ただ、記憶に残らないものの、飛ばした記憶に内容がなく面白くないことは残っている。これは過程はないが結果は残るという、キングクリムゾンそのものであり、ディアボロのキングクリムゾンが映画の形をして顕現してきた神々しい存在であるともいえるかもしれない。
キングクリムゾンを体験できる映画という珍しい個性を評価して、この順位をつけることにした。
四十位
解説
やはり、最下位はこの映画しかありえないと思う。
つまらなすぎて10回以上見たが、何度見ても新しいつまらなさが発見できる快作である。
わたしは劇場でドラえもんを見ることはかなり少ないのだが、緑の巨人伝は珍しく劇場で見て、あまりのつまらなさに衝撃も受けた。
当時も見終わった後つまらなすぎて逆に見る価値があったと思ったもので、見る価値のあるつまらない映画という概念を教えてくれた思い出の映画でもある。
つまらない点は無数にあって語りつくせないが、本作のつまらなさのポイントで特に重要なのは、つまらなさのジェットコースターが体験できることである。
普通はつまらない映画でも、見ていくと少し盛り上がって若干面白いシーンがあり、トータルで見るとまぁ許せるかとなる。が、この映画に関しては、常に直前までよりつまらないシーンが連続して流されて、つまらなさが狭義単調増加をしていく。このような映画は他にはない。
ただ、擁護できる点も多少はあり、全編でしばしばホラー要素を出そうとして失敗している点は見受けられるのだが、これは旧ドラの藤子先生のテイストを本来は出したかったのではないかと想像はできる。新ドラオリジナル映画の一本目なので、多少のチャレンジはしているだけで評価すべきというのも、一理がある擁護意見ではないだろうか。旧ドラ末期では、日常描写やホラー要素の復活についてもはやチャレンジさえしていないような雰囲気があったので、失敗してもチャレンジしてる分だけましではある。
失敗だったとしても、この失敗から明るい路線が新ドラのあるべき姿という結論にいたり、ひみつ道具博物館や南極カチコチに至ったなら、十分役目は果たしたのではないだろうか。
さて、内容については一応このように擁護できなくもないが、他にも、
・原作人気キャラのキー坊を無駄遣いするな
・自然を守れというメッセージを子供声優に言わせるな
といった文句はあり、特に子供声優に「自然を守ろうと思います!」といわせるのは、大人の意見を子供に言わせ、それをドラえもんを通して全国に発信するという、中々にイビルを味わうことができる。
ここまであからさまなイビルは中々ないので、最近はこのシーンに至るたびに、背景の邪悪さを感じてにやけるようになってしまった。
そして、緑の巨人伝を何週もしていると、自然保護派の緑の星の方々が強硬すぎるので、自然保護を謳いながら、実は極端な強硬姿勢をとる自然保護団体を糾弾するのが本当のメッセージなんじゃないか?と謎の疑いさえ持ててしまった。
まぁそんなわけは勿論ないはずなので、安易な強硬姿勢は逆に反発を生むというのが体験できたのもいい経験だった。
緑の巨人伝の面白いところを述べると、「あ、ジャイアン溶岩」のシーンだけは普通に面白い、よい描写である。
他には、つまらなさがありすぎるので、複数人で鑑賞して感想をまとめると、まとめる前後で発見が生まれやすいという長所がある。
個人的に文句なしの最下位なので、ぜひ複数人で鑑賞して感想のまとめ会まで実施してほしい作品である。