キン肉マン~四次元殺法殺人事件

キン肉マンのミステリ小説が出ることは知っていたが、こんなの流石に面白くないだろうと思ってスルーしていた。

 

が、なんと、意外にも面白いと聞いたので、せっかくなので読んでみた

 

*わたしはキン肉マンの漫画は、初代、二世ともにだいたい読んでいて、読んでいないのは、Vジャンプ連載版のキン肉マン二世の1,2巻だけ(3巻以降は読んだ)

 

 

前提でキン肉マンの漫画をだいたい読んだと書いたが、二世と再連載のキン肉マンはともかく、元々のキン肉マンは読んでいないと、恐らくなにも面白くないし、そもそも読む理由さえ全くない本だとは思った。

 

が、キン肉マンの漫画が大好きで、特に超人オリンピック前の話や、キン肉マンの突っ込みどころのある議論展開が好きな人にとっては、「当たり」のミステリといっていい出来であった。

 

読んでみて思ったことは、キン肉マンとミステリだが、実は相性がいいのである。

 

例を、キン肉マン二世~究極の超人タッグトーナメント~からもってくる

 

ある試合で、キン肉マンがなにやら精細を欠く。それが、試合前に自らの腕のロングホーンをバッファローマンに返したため、腕の骨がない状態で戦っていたためとわかる。そこでどうなるかだが、腕を圧迫して戦っていたため、未来で流行りの加圧式トレーニングを先取りして行う形になり、超人であることもあわさり骨が復活して勝つというものがある。

 

またある試合だと、キン肉マンの胸に砂が落ちると死ぬ砂時計が埋め込まれる。これを、正義超人同士が友情を失うことで発生するアイアンスウェットを利用して、解除するという場面がある。

 

これらは、「ゆで理論」といわれるものだが、よくよく見ると、緩い伏線と現実ではありえない理論を駆使して問題を解決する、超人ミステリともとれるのである

 

すなわち、こういった「ゆで理論」が疑似的なミステリに取れると思うと、キン肉マンとミステリは、むしろ相性がいい杭合わせといえるのだ。

 

キン肉マンを読んでいないと意味不明だが、作中に登場する超人の能力をフルに利用して話が展開されている他、数々の記述から作者のキン肉マンへの愛が伝わるものになっていて、「二次創作としてのキン肉マン」としてはとても出来が良いものであると感じられた。

 

惜しむべきは、キン肉マンが好きで、ミステリを普段から読む人が少なく、想定読者層が相当にせまそうという事だろうか。

 

興味を持ったキン肉マン好きには読んでほしい作品である